テンカラのいろはを覚えて道具も揃え、キャスティングも川のポイントもわかりいざ釣行へ!というテンカラデビュー前のあなた。いざ渓流へとおもむく前に、各月ごとのフィールドの状況のテンカラでの対応戦略を心得てみません?「どこで釣るか」という場所選びと同等に、またはそれ以上に「いつ釣るか」という時期選びも大きく釣果を分けます。相手は渓流という自然。移ろいゆくものに歩みを揃えて自然からのご褒美として受け取る釣果。ただの釣りということではなく、山や渓との交わりとひとつ広い視野でテンカラを楽しみましょう。
各月ごとのフィールドの特性について、「時期」と「天候」と「時間帯」
ということで、テンカラのフィールドとなる渓流の各月ごとの状況についてざっくりとまとめていきます。私ごとですが、この4月でテンカラデビューからまる1年。ようやく1年を通じてのフィールドの定点観測が完了し、自らの備忘録も兼ねつつ、渓流ビギナーのみなさんに参考になるような情報になればなーと。自分がホームとしている長野の渓流の状況なので、地域によって違いはあるかもしれませんが、おおよその季節の傾向をつかんでいただければ幸いです。
釣果を分けるのは「時期」「天候」「時間帯」という3軸。「どこに行くか」という場所と合わせ、この3軸も考えて釣行計画を練るとぐっと最初の1尾が近づきます。
2月:解禁の早いエリアではシーズンイン。放流ポイントが勝負所。
早いエリアでは2月の中旬に渓流釣り解禁。解禁とは言えまだまだ水温も低く、放流魚の相手が中心になるかと思います。漁協発信の情報で放流のタイミングと場所をキャッチするのが釣果を分けるポイントに。源流域での越冬したイワナ狙いも可能性あり。イワナより冷水に弱いヤマメやアマゴについては活性が低く、水面直下の釣りであるテンカラでは苦戦を強いられがち。近くに温泉があるような渓流(葛温泉とか)では水温が安定し、早期から釣果を得やすい場所も。事前調査がキモですね。
2月のイワナ。大町の籠川にて。堰堤下の深みから引き出しました。
3月:解禁シーズン。雪代前の源流域のイワナが狙い目
3月になるとほとんどの渓流が解禁となります。源流域ではまだまだ雪深く、渓流へのアプローチに難儀するものの、入渓さえできれば雪代前の穏やかな流れにいるイワナはテンカラでも十分釣果があがります。アプローチが大変なぶん先行者の可能性も低く、プレッシャーを感じずにのんびりと渓流を楽しめるのもこのシーズンならでは。流れの穏やかな淵をちょっと深めに毛鉤を流すのがコツ。アタリはラインの感触で。ズンッという盛期とはまた違った感触のアタリが楽しめます。また、残雪の源流域は風景も美しく、スノーハイクも兼ねて楽しめるシーズンです。くれぐれも雪の踏み抜き等のトラブルには気をつけて。個人的には一番好きなシーズンかも。本流域のヤマメ、アマゴは水温が上がらずまだまだ活性が低いです。
3月のイワナ。裾花川支流にて。この時期でも良型が狙えます。
4月:春うららではあるものの、源流域での雪代に苦戦する時期も
気温も日に日に上がっていき、テンカラ向きのシーズンに入り始めます。この時期に大きく釣果を分けるのは雪代=雪解け水の存在。雪代が入っての濁りと増水ではまず釣果は望めないと考えたほうがいいかと。雪代期に狙うなら源流域の標高が低くて雪代そのものが発生しづらい渓流か、取水堰堤の下流で雪代の影響が抑えられているところが狙い目ですね。雪代が収めれば待ちに待ったテンカラ盛期の到来です。
4月のイワナ。上田の武石川にて。雪代対策として源頭の標高が低い小渓流を選択。それでも狙いはピンポイントで苦労して引き出した小型イワナです。結局この日はみぞれ気味の雪が降ってたりだったので、コンディション的には雪代前の状況に近いような気もしつつ、、、狙いどおり釣れたから良しとしましょう。
5月:藤の花とともにテンカラ盛期!隙あらば渓流へ行こう!
融雪が進み、水量も水温も落ち着いたらいよいよテンカラのシーズン!渓魚の活性も上がり、水面直下でのダイナミックなテンカラらしい釣りが楽しめます。一般的に藤の花が咲く頃がテンカラの盛期と言われるとおり、この季節が初心者にはいちばんデビューにいい時期かもしれません。中流域のヤマメも数釣りが狙えるシーズン。盛期ゆえ先行者の存在はある程度覚悟が必要です。釣行の際には入渓点の候補を2〜3用意し、上流の先行者の可能性がない渓流(車止めから上にアプローチ経路がなく、車がない=先行者がいない、というフィールドなど)だと心置きなくテンカラを楽しめるかと。こと長野に関して言えば、源流域の通行止めの解除が4月末〜5月初旬に多いため、第二解禁時期と言ってもいいかもしれません。運良く通行止め解除で解禁から誰も入っていない5月の渓流へ、、というテンカラを嗜むものなら誰しもが願ってやまないような状況すら狙えてしまいます。ローカルの特権ですね。
5月のイワナ。志賀高原の雑魚川にて。解禁の遅い雑魚川ですが、5月は激戦区。自分は朝イチ入渓が5月のスタイルです。
6月:梅雨の釣行はタイミング命。増水には要注意
5月に引き続いて6月も渓魚の活性は高く、心地よい渓流釣りを存分に楽しむことができます。小雨がパラつくような状況では釣り人の気配がうまくカモフラージュされ、晴天よりも釣果が出るなんてことも。大雨での濁り、増水は釣果も上がらないだけではなく遡行そのものが困難に。見る見る川が泥濁りになり水かさが増し、さっき渡渉したポイントが30分後には渡渉不能に、なんてことも当たり前に起こり得ます。落雷などの危険も伴うため釣行のタイミングには要注意。梅雨でのリスクをしっかりと頭に入れつつ、数日の天気の変化をきっちりとトレースし、良いコンディションのタイミングを選べば楽しい1日となること間違いなし。
6月のイワナ。裾花川にて。「神の淵(と個人的に呼んでいる場所がありまして、、)」からは一つの小さな淵から2〜3尾引き出せることも珍しくありません。
7月:梅雨明けまでの初旬は盛期、中旬くらいから山岳域の調子アップ
梅雨明けまでは好調な6月の感触そのままに気持ち良いテンカラが楽しめます。夏山登山のシーズンインと時を同じくして山岳エリアの源流域が盛期に。源流派からすれば早期〜通行止め解除〜夏山解禁と3回もシーズンインがあるようなものなのかも。気温が上がり始る下旬あたりからは水温との関係で朝マズメ、夕マズメと1日のうちの時間帯で釣果に差が出始めます。
7月のイワナ。岐阜の蒲田川にて。大きな渓流、降雨時でも本流脇の小さな流れは水量も流速も落ち着いているケースがあり、この時期ではそんなポイントから思わぬ釣果が得られることも。
8月:渇水と水温上昇で厳しいシーズン。源流域が狙い目
8月の熱い時期になると水温も上昇、水温が20℃ほどになってしまうと渓魚の活性が著しく下がり、渇水での水量の減少も伴ってテンカラには厳しいシーズンとなります。「夏ヤマメ一里一匹」の格言通りですね。マズメ時でも水温が下がりきらないなんてことも。この時期のフィールドはイワナ狙いで源流域と高標高。時間帯としては早朝が勝負に。
8月のイワナ。富山の名もなき支流にて。放流なしの渓ですが、タイミングと場所によっては8月でも良型が期待できます。
9月:渇水も落ち着き、水温も適性に。シーズン終盤間際が勝負
9月いっぱいで渓流釣りのシーズンも終了、10月から禁漁期間になります。風も涼しくなり、秋の気配が感じられる頃になると産卵前の渓魚の活性も上がり、シーズンの総まとめとしての釣行にグッドな季節に。個人的には雲の形が秋らしい形になってきたらシーズン終盤の最後のチャンスかなと思っています。悔いを残さないよう、きっちりと釣果を上げましょう。
9月のイワナ。シーズン通しての恵みに感謝してのこの年最後の一尾。
まとめ:それぞれの時期に応じたフィールド選択を
と、シーズン内だからといっていつでもどこでも釣れるというわけでもなく、また、調子が良かったフィールドが1週間後にはまったく手応えなしなんてこともザラにあります。冒頭にもご案内した通り、「時期」「天気」「時間帯」の3軸で釣行のタイミングを考えてみるとぐっと釣果の可能性が上がるかと。季節の変化に敏感になり、渓流を想い、「いま、ここ」の意識で渓流へ向かう。季節に想いを馳せることもテンカラの一部で、そんな広がりもまたテンカラを通じて豊かになる人生というか。
それではみなさま、素敵なテンカラライフを!
このページはテンカラ初心者向け入門講座の4−1です。
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