テンカラそしてアウトドアにまつわる道具の美しさとスタイルに着目しご紹介する「テンカラ道具考」。#01はTenkara Rod Coの仕掛け巻です。
逆輸入の「Tenkara」というスタイル
ご存知の方も多いことかと思いますが、アメリカを中心に海外でも「シンプルフライフィッシング」としてテンカラが注目されています。国内でも決してメジャーとは言えず、渓流釣りの「エサ釣り」「ルアー」「フライ」「テンカラ」という4つの釣法の中でも、恐らく知名度も釣り人の数も最も低いだろうと思われるテンカラ。一般的には釣果の上がりにくい釣り方とされがちなテンカラがここまで海外で人気が出ているのは、「テンカラ」の精神性にあるんじゃないかと。
Less is More、そしてウルトラライトへ
自分は登山、トレイルランニング、スノーボードと、渓流釣りではない山のアクティビティをきっかけにテンカラにハマりこみました。山というものの楽しみ方を少しづつ広げていった感じですね。ということで、登山の流行というか、ムーブメントはここ数年間ずっと定点観測しているわけですが、数年前から流行になってきている登山のスタイルが、UL(=ウルトラライト)という思想。「Less is More」をキーワードに、軽量で必要最低限の道具でトレッキングを楽しむというスタイルがここ日本でも市民権を得てきています。ユニクロの「ULダウン」なんかは山道具ではありませんが、一般的にも知名度があるかなと。
トレイルランニングの隆盛も、このULトレッキングとかなーり近しい関係にあります。山を走るという普通の考え方からしたら常軌を逸したアクティビティですが(いや、トレイルランニングを貶めるつもりは全くありませんよ。むしろ、自分もトレイルランニングもテンカラと同じくらい大好きで、近所の里山をウホウホ言いながら駆け回っています)、「装備を軽くして山を楽しむ」という発想はULトレッキングと同じものかと。
自分がトレイルランニングを楽しむことになったきっかけは、ピークハントのトレッキングだとどうしても著名な山域(百名山とか)に入ることが多くなってしまうため、「走る」という楽しみを加えれば、例えば低山とか里山とか、「山そのものにいることをどこの山域でもどんな標高でも楽しめる」と考えたことでした。重い荷物だと日帰りが無理なピークハントも、トレイルランの装備だとコースタイムを大幅に短縮して日帰りが可能。より遠くへ、より自由に。そんな発想かな。(ちなみに、日本のULトレッキングの隆盛についてはほんのちょっと自分は懐疑的です。どうもファッション優先というか、道具に対する気持ちが強いというか、山というものを楽しむというもともとの発想から離れたところでカルチャーが形成されている側面もあるような気がしてしまっていて、、、良い道具が記号化して承認欲求を満たすためのツールとなってしまっているというか、、、マーケティング的には大成功でしょうけど、、、)
シンプルゆえの美しさが受け入れられたテンカラという思想
さて、そこで立ち返ってテンカラ。この「Less is More」「ウルトラライト」という思想と通じるところがテンカラにはあるように思います。シンプルな道具立てで渓流を楽しむ。これがきっと海外で「洗練されたシステム」として受け入れられ、禅の思想というかジャパンビューティーというか、美しいスタイルとして好意的に捉えられているんじゃないかなと。釣果が上がる釣り方だからとかそういうことでは決してなくね。きっと、日本におけるフライフィッシングのイメージとちょうど逆の感じで見られてるんじゃないかな。フライフィッシングっていうと「なんだか優雅でスタイリッシュ」ってイメージで日本で受け入れられているように、海外ではテンカラが「ミニマルでソリッドな洗練された禅にも通じるスタイル」みたいな。
逆輸入の「Tenkara」というスタイル
そして、そういう思想から受け入れられているため、海外のテンカラの道具はモノとして美しく、スタイリッシュなものが多いように思います。ブランドでいうと、Patagoniaがテンカラのロッドをリリースしたのをはじめ、Causwellというブランドや本記事で紹介するTenkara Rod Coも非常にデザイン性の高い、シンプルでスタイリッシュな釣りとしてのテンカラのイメージそのままのプロダクトをリリースしています。
余談ですが上記のCauswellのウェブサイト、写真が本当にきれいです。自分もこういうスタイルのテンカラを日本でも広めていきたいなーというささやかな野望があったり。
思想性を持ったTenkara Rod Coのラインホルダー
長い長ーい前置きを経て、今回紹介するのがTenkara Rod Coのラインホルダー。ラインホルダー=仕掛け巻ですね。上記の前置きを経て見ると、「シンプルでスタイリッシュ」というイメージ、思想性に沿ったデザインになっていると納得していただけるのでは。
釣れれば道具なんてなんでもいい。その気持ちは自分もよく分かります。でも、道具には道具としての美しさがあって。「スタイルとしてのテンカラ」も存分に楽しみたい。「テンカラ」を好み「Tenkara」のスタイルを受容する人にはとっても良い、なんというか意味のあるプロダクトなんじゃないかなと思います。
そして、実際に入手して自分も使ってみたところ、ウォルナットの質感がとってもいい感じ。無塗装なのかな、水に浸かったりするとややガサガサッとした質感になるため、定期的にアマニ油とかの乾性の油を塗り込んでお手入れすることをオススメします。上記は油を塗り込んで乾燥中の図。こういうスタイルもテンカラ、いえ、Tenkaraのひとつの楽しみ方だと自分は思います。
自分が購入した時は日本の代理店がなく、Tenkara Rod Coの公式通販から購入しましたが今は国内でも買えますね。普通の仕掛け巻と比べると少しお高いですが、モノとして所有する喜びと深みを考えると実はリーズナブルと言えるんじゃないでしょうか。
それではみなさま、素敵なテンカラライフを!