テンカラ書評。
高桑信一さんの『源流テンカラ』について。
「源流」と銘を打っているとおり、深山幽谷での野営テンカラ釣行記が中心ですが、これ実はテンカラ初心者に最適な一冊なんじゃないかなーと。
というのも。
釣行記を通して「テンカラカルチャー」というかテンカラの世界観というか、自然の中に入り込み、シンプルに渓流やイワナとのめぐりあいを楽しむというテンカラの持つ文化みたいなものがビシビシと伝わってくるんです。
個人的にはテンカラって上記の通り、ミニマルな道具立てでスマートに渓流・渓魚と親しむっていう「山の楽しみ方のスタイル」のひとつだと思っていて、その魅力が活き活きと描かれているというか。
とは言いつつも、単なる雰囲気ものの本には留まらず、色々な情報面についてもとっても豊富。
こんな感じで道具についても詳細な解説が。
また、釣行記には地図付きでガイドも。
写真も美麗。
釣行記が中心でありながらもテンカラというカルチャーの全体が捉えられて、道具や釣法、毛鉤、さらにはフィールドについての情報も網羅されているという充実の一冊です。
他にも色々なテンカラのハウツー本が出ていますが、まず一冊となるとテンカラの世界の奥深さというか、懐の広さを感じられるこの本がオススメ。釣法というよりはテンカラという世界観というか。自分も知り合いの手ほどきを受けた初釣行のあとに初めて買ったテンカラ本がこれ。以来、常に枕元に置いてことあるごとに拾い読みをしているという。
源流、と聞くとハードルが高く感じてしまう人も多いだろうし、掲載されているフィールドも渓での野営が前提なので初心者にはなかなか難しい感じですが、テンカラという切り口からこんなにも山を豊かに楽しめるということを感じさせてくれるし、これをひとつのスタイルとして、自分ならどんなスタイルでテンカラと親しむかという考えの契機にもなるんじゃないかと。
個人的には源流釣行にトレイルランニングとULトレッキングの要素を絡めて山歩きとテンカラと野営を軽やかに楽しむ、みたいなスタイルを追求していきたいなーと思ったり。
テンカラは十人十色とはよく言われますが、ひとつの源流釣行という洗練されたカラー=スタイル。そこをヒントにして、自分なりのテンカラスタイルを考えるのも楽しいですよ。
あ、ついでに言うと装丁も誌面のデザインもスッキリシンプルでハイセンス。そのあたりにこだわるデザインコンシャスなテンカラ好きのあなた(そんな人いるのか)にも超絶オススメです。