さて、キャスティングのやり方はだいたいわかったけれど、どこに毛鉤を打ち込んでどう流せばいいのかわからない、、という渓流デビュー前のあなたに毛鉤を打ち込むポイントと流し方をお伝えします。押忍。
下記の記事にてキャスティングがなんとなく捉えられたあなた。
渓流デビューはもうすぐですよ!本記事にて「どこに毛鉤をキャスティングしてどうやって流すのか」をマスターしちゃいましょう。
まずは川の形状と各部の通称を頭に入れよう
毛鉤を打ち込む「ポイント」についての考え方はいたってシンプルで、川の中のイワナ(基本、自分はイワナを相手にするのでイワナのお話になりますが、ヤマメやニジマスでもおおよその考え方は一緒です)がいる場所に毛鉤を打ち込んで流せば釣れます(その他の環境要因でイワナの活性が低く、いる場所に打っても釣れないこともありますが、、それはまた後の話)。すると、まずは川のどこにイワナがいるのかをなんとなくでも理解することが大事ということになります。
さて、冒頭の画像を見てみてください。白いマルは今のところ完全無視でオーケーです。川ですね。そして渓流ですね。それ以上でもそれ以下でもない、、、、ように見えて、川には各部に通称がついています。不思議なもので、名前がわかると認識ができてくるものでして。下記にて川の各部の通称を頭に入れましょう。
・淵
→川の深くなっている部分。
・瀬
→淵と比べると浅くてサラサラッと流れている部分。
・落ち込み
→段になっている部分。小さい滝みたいな感じですね。
・開き
→落ち込みの上でちょっと広がっていて流れのゆるやかな部分。単純に流れが緩やかで広がっている部分を指すことも。
・巻き返し
→流れの具合で軽く渦のようになって上流側に流れが戻ってグルグルしてる部分。
上記の川の各部の通称を頭に入れて冒頭の川の画像をもう一回見てみてください。流れは画像の上部が上流。まだ白マルはスルーで。ただの「川」だったものが、ここが落ち込み、ここが瀬、ここが淵かな、、と川の見え方が変わったんじゃないかと。イエス、それがテンカラマスターへの第一歩です。まずは川の変化について認識を高めましょう。
おおよそ、渓流は落ち込み→淵(脇に巻き返し)→瀬→開き→落ち込み→淵(脇に巻き返し)→瀬→開きという感じのループで構成されています。この「変化」を見極めること。これがまず前提になります。そしてその「変化」の部分が、イワナが居付くポイントと密接に関わってきます。逆に言うと、川の中の「なんでもない」ところ。「変化」が生じていない部分では釣りにくいということです。よくあるのが、流れのほとんど生じていない堰堤上のプールみたいなところでゆらゆらと泳いでいるイワナを見つけて毛鉤を打ち込んでも全く反応しないパターン。あれ腹立ちます。こんちくしょう。
次のポイントは「イワナが身を隠せる場所」と「流速」と「水深」
さて、川の「変化」に開眼したら次に考えることは「イワナが身を隠せる場所」と「流速」と「水深」。
まずは「イワナが身を隠せる場所」について。イワナもアホではないので、生きるために外敵から身を守ります。イワナでなくとも、川遊びをしている時に魚を見つけて、人間の存在を察知した瞬間にものすごい勢いで物陰にすっ飛んでくみたいな様子を目の当たりにした人も多いのでは。そう、イワナもおんなじ。生きるために捕食をしなければならないけれど、イワナは基本的に身を隠せる場所(の近く)に定位する傾向があります。例えば「大きめの石や岩の脇」「白泡の下」とか。「狭いところが落ち着く」なんていう人間もいますが、イワナもそんな感じ。先ほどご案内した「川の変化」。「変化」のそばにはイワナが身を隠せる場所がたくさんあります。そういうことで、「変化」が大きなポイントになるんです。なるほど。
次の「流速」については、毛鉤をエサと間違えて食いつこうとした時に、あまりに流れのスピードが速いとイワナのほうで食いつけません。超激速の流しそうめんを食べる難易度を考えてみてください。一般的にテンカラでは、「人間が歩くスピードより少しゆっくりめ」くらいの流れに毛鉤を送り込むのがセオリーとなっています。だいたい1秒に50cm〜1mくらいの流れですね。イワナがいるいないに限らず、テンカラが得意なシチュエーションは上記スピードの流れです。
そして「水深」について。流速とも関連しますが、テンカラは基本的に水面直下の釣りです。すなわち、水深が深いところはあまり得意としていません。水深300mの川の底にいるイワナにテンカラで挑んでもダメなのです。渓流テンカラだと膝〜腰下くらいの水深のところが一番アツい水深なんじゃないかと。自分の釣り方だと膝に達するか達しないかくらいのポイントが一番よくイワナが出てる気がします。
イワナはどこでエサを摂る?YパターンとICパターン
さて、色々わかってきましたね。最後の注目点は「給餌ポイント」。どこでイワナがエサを摂るかということです。お察しのとおり、イワナはエサになるカゲロウとかの水生昆虫が流れてきやすい場所でエサが流れてくるのを待っています。若い女性モデルを街でスカウトするために限界集落には行かないだろうという理論です。
そこで頭に入れておきたいのは「Yパターン」と「ICパターン」という考え方。伊藤稔さんという方のセオリーです。YパターンはY字のように二つの流れがぶつかる場所。交差点の交通量が多いのと似てる。そしてICパターンはまっすぐな流れ(I)の横に巻き返し(C)がある場所。駅前のロータリー的な。流れの脇のグルグルに葉っぱとかが浮いてるの、見たことありますよね?流れてきたエサがそこに溜まるので、イワナとしては格好の給餌ポイントとなります。イワナは交差点とロータリーでナンパするわけです。
ポイントまとめ:「変化」「テンカラ適正」「エサ」
さて、上記を複合させると、ただの「川」からイワナがいる場所の見極めができてくるんじゃないでしょうか。
・イワナが身を隠せる流相の「変化」がある
・テンカラが得意な秒速50cm〜1mくらいの流速で膝〜腰下くらいの水深
・Yパターン、ICパターンのようなエサが流れてきやすい場所
うん、だいぶつかめてきましたね!
毛鉤の流し方
さて、ここまででイワナのいるポイントがわかったら、いよいよそこにキャスティング、毛鉤を送り込むことになります。
コツは、「ココにイワナがいる!」というポイントの少し手前に毛鉤を打ち込んでポイントに流し込むこと。「ナチュラルドリフト」といって自然に毛鉤を流すのがテンカラの基本。エサを模してるわけだから、そりゃ自然に流す方がいいですよね。そういうわけで、ラインが毛鉤を引っ張って不自然な動きにならないようにロッドでうまくラインの動きをコントロールしましょう。
そして、毛鉤を流す時間はせいぜい3〜5秒くらい。同じ場所を2〜3度流してダメだったら次のポイントへ。もちろん、状況によっては長めに流すこともあるし、ここで出る!と思ったら何回も打ち込んで粘ることもありますが基本の考え方としては3〜5秒を数回流しでオーケー。
また、キャスティングはできる限りポイントから離れた場所から打ち込むのが基本です。魚眼レンズというものがあるように、魚の視野は人間より全然広いわけでして。渓魚は警戒心も強いので、「岩化け」「木化け」の言葉どおり、できる限り川の中を歩くこと(「川通し」と言います)は避け、人間の気配を悟られないようにしましょう。イエス、ジャストライクアジャパニーズニンジャ。そして、基本的にイワナは上流向きの体勢で定位しているので、「釣り上り」という下流から上流へポイントを探りつつ進んで行くというのがセオリーになっています(対義語は「釣り下り」。一般的には渓流ではマナー違反扱い)。また、先行者がいるとイワナが警戒体勢になっている可能性が高いので、ある程度時間を空けて入渓したほうがいいかと。先行者を追い越すのもNG。止むを得ず先行者より上流に入渓する場合は十分に距離を取って入渓しましょう。みんなで楽しむステキな渓流。ちなみに自分は先行者の可能性の低い源流部を主なフィールドにしています。入渓点も自分が入るところより上流には存在しないようなフィールドが好み。誰にも気を遣わず、全力で渓流を楽しみたいので、、、
あと、初心者が陥りがち(自分もですが、、、)なのが落ち込みに毛鉤を流し込んで根掛かりというパターン。意識的に落ち込みを探ることもありますがその場合も狙うのは落ち込の下の深みの部分。基本的には落ち込みの中でイワナがエサに食いつくのは難しいと考えていた方がいいかと思います。開きを流してそのまま落ち込みへドロップイン→根掛かりという悲しい事態を引き起こさないためにも落ち込みの手前でピックアップしたほうが吉。滝で流しそうめんはしんどい。
ポイントは具体的にはこんな感じ。
さて、いろいろわかってきたところでもう一度冒頭の画像を見てみましょう。
もうお気づきですよね?白いマルで囲っている部分が「変化」「テンカラ流速/深度」「エサ」があわさったイワナがいるポイントです。こんな感じのところに毛鉤を送り込んでいけばオーケー!
さて、せっかくなのでもう一つ画像で具体例を。
こちらも画像上部が上流、下部へと流れている渓流です。
ここもいけるんじゃない?とか、ここは出ないんじゃない?とか異論反論、大歓迎。あくまで「自分ならここ」です。そして流派は十人十色。「こうじゃなきゃいけない」「ああじゃなきゃいけない」から一番離れたところにあるのがテンカラですから!
そして、上記と全く関係ない場所で釣れることも多々あります。そして、何より環境要因に左右されることも大きい。ただ、基本としての考え方をある程度頭に入れておけば自分なりの仮説も立てられるかと。「水温が低くてイワナの活性も低そうだから深めの淵を探ろう」とか「コンディション抜群だから瀬に出て積極的にエサを取りに来るはず」とか。どこでイワナが出たかで当日のコンディションを探ったりもできます。
そして、個人的にはテンカラの釣果の個人差(言い換えればウマいかヘタか)は毛鉤でもなくキャスティングの精密さでもなく、このポイントの見極めに拠るところが大きいんじゃないかと思います。経験を積めば積むほどその時々に合わせたポイントの選択ができるようになる。そのトライアル&エラーと蓄積が楽しいんだからテンカラとは罪な野郎です。
さあ、渓流に出ていきたくなってきましたよね?
それでは素敵なテンカラライフを!
このページはテンカラ初心者向け入門講座の3−2です。
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